埼玉県生活指導研究協議会blog

全国生活指導研究協議会埼玉支部のブログです。各サークルや学習会の案内などをお知らせします。連絡先は以下です。nabesen7@gmail.com

本の紹介

相変わらずコロナも社会状況も先行き不透明な状況ですね。
先日、竹中平蔵氏が「ベーシックインカムを偽装した国民一人あたり7万円支給の発言は、(あまり報道されていませんが)衝撃でした。公助よりも自助を強調する菅内閣が推進する新自由主義政策とこの本格的な棄民政策が合わさった時・・・私たちの社会はまさにディストピアになるでしょう。
 
そんな時ですが、一筋の光を感じたので投稿します。
フォローしている文筆家・岸田奈美さんが本を出しました。
 
岸田さんはおもにダウン症の弟さんやお母さんとの生活、日常に起きる様々なことをエッセイとして書いている方で、軽快な文章とそこに表れている考えにいつもうなっていましたのでさっそく注文しました。
 
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幼稚園を卒園して、すぐのことだ。
母が私に言った。
「お姉ちゃんやからって、我慢しなくていい。弟の面倒なんて見なくていいし、楽しくなかったら、一緒にいなくてもいい」
それでも私が、短所を補いあいながら、弟と仲良くやってきたのは。
弟といるのが楽しかったからだ。
こういう話をすると、反応にむずかゆくなる時がある。
ダウン症の弟さんを大切にして、立派なお姉さんですね」
ダウン症の人は、天使ですよね」
悪気はないのはわかってるよ。
ぜんぜん、怒ってない。むずかゆいだけ。
でもなあ、ちょっと違うんだよな。
これってさ。
「花粉症の男って、天使だよね」
「わかる。鼻が詰まってて、こっちの汗の臭いに文句言わないしね」
「涙で視界がぼやけてるから、ノーメイクなのもバレないもん」
「花粉症の男はみんな、おおらかで性格が良いんだよ」
って言ってるようなもんなのよ!聞いたことあるかよ、そんな話!
いじわるなダウン症の人だっている。
我慢してダウン症の弟の面倒を見ろと押しつけられ、参ってる姉もいる。
花粉症の男にも、ろくでなしはいる。
声を大にして言いたい。
私はダウン症だからではなく、弟だから、愛している。
ダウン症の家族を、愛せない人もいて、当然だと思っている。
より抜粋
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岸田さんがこのエッセイを書いたのは2020年の5月ですが、すでにそこからまたひとつ進んでいるのでしょう。本のタイトル「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」は掲載エッセイのタイトルなのですが、たらればさんとの対談ライブ配信を聞いたところ「障害を持つ家族と明るく楽しく暮らす岸田さんの文章は読むたびに辛い」という当事者の感想から、より深く考えたそうです。(以下動画の25分頃)
 
日本会議的な家族主義や残存する家父長制とミソジニーそしてパターナリズムとはまったく違う水平線がそこには広がっているように感じます。
 
 
再掲
弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった
 
最新記事は以下
24歳の弟は、字が書けない(はずだった、怪文書を読むまでは)
 
 
全生研の昨年の基調で取り上げられた、べてるの家-当事者研究の中に「外材化」という概念がありますが、岸田さんの文章を読むたびに、それをちょっと思い出します。
各エッセイもとてもいいので、興味のある方は上記サイトから読めます。